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2019.09.02

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人材開発戦略の事例〜人財開発をどのように進めてきたのか〜[2]人財開発戦略の企業事例 事例1 STEP1

当社代表、下山博志の著書『実践 人財開発 HRプロフェッショナルの仕事と未来』で、反響が多かった
第3章人材開発戦略の事例〜人財開発をどのように進めてきたのか〜を、全5回に渡り掲載いたします。

 

書籍

(下山博志著 『実践 人財開発 HRプロフェッショナルの仕事と未来』
 第3章人材開発戦略の事例〜人財開発をどのように進めてきたのか〜
 2017年、日本能率協会マネジメントセンター)

 
[2]人財開発戦略の企業事例

人財開発を戦略的に行ってきた3社の事例を紹介します。それぞれの企業は業種、業界や規模も異なりますが、現在では人財開発を行う専任部門があることと、経営トップが人財開発に強く関わってきたことは共通しています。
また、3社ともに本書の趣旨である「人財開発戦略の内製化」に向けた取り組みを前提としているため、具体的な戦略がわかりやすいという判断で紹介します。

 

事例1. 食品製造販売メーカー「ル・スミエル」
背景
中堅食品メーカーのル・スミエル社は、1969年に神戸で創業し、関西圏を中心に高級食品販売メーカーとしてプランドを確立している企業です。
創業者の太田邦夫 (仮称) は、 当時はあまり使われていなかった高級食材を使った商品に目をつけ、 創業間もなくデパートの食品売場と路面販売店を出店し、 一代で年商500億円規模まで成長させました。その後、太田社長は後継者を外部の同業者から引き抜き、自身は経営から退き、新商品の研究開発に専念することになりました。カリスマ創業者の後を引き継ぐことになった後任の社長は、着任後すぐに従業員のモチベーション向上に手をつけ、その施策が功を奏し、短期間で従業員をまとめ信頼を得ることができました。そして、販売店舗の拡大も積極的に進め、売上は5年間で1.5倍にまで拡大し、一見順調な成長路線を進んでいました。
ところがその後、急拡大による品質の低下と利益構造の悪化により、一転して赤字に転落していきました。それでも社長は拡大戦略を続け、売上拡大はするものの増収減益の構造のままとなり、結果として社長は責任をとって解任されてしまいました。
その後、事業再生を任されたのが、現社長である太田茂樹(仮称)社長です。茂樹社長は、創業者の太田前社長の長男で、直前まではマーケティング支援のコンサルティング企業で、コンサルタントとして活躍していました。いつかは父親の会社で働くことも考えてはいましたが、突然の登板となったのです。子供のころから父親の背中を見ながら育ったこともあり、すぐさま品質重視の経営スタイルに戻し、わずか3年で赤字から脱却することができました。
茂樹社長はコンサルティング経験を活かし、はじめの数ヶ月は現状を客観的に把握することに努めました。近々の課題は収益に見合った利益構造です。
多くの場合、組織を再編成し、生産性の向上とコスト構造の見直しを図ることが一般的す。その一環として、人事の再編とリストラを行うといった方程式を使います。
茂樹社長は、この方程式を用いる中に、 人財開発戦略という構造改革を付加して再生のストーリーを開始しました。

 

人財開発戦略ストーリー
茂樹社長は人事、 人財開発については、 まったくの未経験者でした。当時の人事部長はプロバーとして入社して、生産ラインで経験を積んだ後に人事の責任者として配属されていました。人事・研修の業務を担っていた担当者はいましたが、戦略を構築して行っていたわけではなく、人事労務のコンサルタントが適時サポートしている状況でした。
2009年度のル・スミエル社の売上は750億円、従業員は1,100名。この状況で「人財開発戦略」の構築と実行を弊社がサポートすることになりました。
 

STEP 1現状分析
マネジメントチームのインタビューとエンゲージメント・サーベイを実施した結果を整理して、以下の状況が把握できました。

現状(209年8月時点)
採用発掘:
高卒3割、専門学校卒3割、大卒4割が新卒入社で、一部の本社専門職を除き、中途採用はほとんど行われていない。現場は8割が女性で、管理職は約200名。本社スタッフは現場経験者の男性社員中心で構成されている。

 

人材教育:
工場の生産管理に関する教育は徹底されているが、 販売店舗の教育や管理職の教育は行われているものの継続されていない。 サーベイの結果、 どの階層も人材教育に関するニーズは高い。

 

キャリア開発:
自分のキャリアに関する意識が高い社員は少ないが、マネジメント層からは、若いうちにジョブ・ローテーションをさせることにより、将来の管理職を早く育成したいというーズがある。

 

成果管理:
評価制度は外部専門家に依頼して現在検討中。現状の人事考課は社長の影響が大きい。年功序列で行ってきた給与体系が残っており、中途採用者とのギャップも大きい。

 

配置登用:
ーつの部署に配属されると異動はほとんど無く、年功序列の仕組みが残っている。配置についても予測される範囲で、配置転換が行われている状況にある。

 

定着管理:
新入社員から中間管理職まで、毎年徐々に退職率が上がってきている。今年は特に大きく、25 %が退職している。一方、工場には自分の仕事に誇りを持って働いている従業員も多く、帰属意識の差が大きい。

 

後継者計画:
社長は次世代リーダーの育成を検討したいと思っているが、後継者を計画的に育成する考えは現状持っていない。現在の経営幹部は、年功序列の構造で昇格してきたプロバーのべテラン社員で構成されている。

 

組織開発:
新社長就任後、変革に関する抵抗意識の強いべテラン層と、社長就任後に入社した社員の仕事に対する意識の違いが出始めている。社内のコミュニケーションも悪く、販売と製造で連携ミスによるトラブルも多い。

 

このような分析結果を整理して、経営会議で説明をしました。この 階では、社長の持っていた課題と、人事部長が持っていた課題、 そのの役員が持っていた課題にはギャップがありました。それぞれの立場役割で、課題の捉え方が異なることが明らかになったところで、今後のような組織になっていくべきかの議論を始めました。

 

つづく
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【参考】
基本STEP1〜4と人財開発戦略8つの施策(図をクリックすると拡大します)
8つの施策

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