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2018.11.01

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「企業と人財」連載 第4回 社内講師を評価する


2018年7月号表紙
「企業と人材(産労総合研究所)」2018年7月号掲載
TRAIN THE TRAINER Mini Guide 社内でプロ講師を育てるトラの巻 第4回 社内講師を評価する 

 

社内講師を評価する際のチェックポイント
前回は、講師育成のプログラムの参考として、ATDが認定している人材開発のプロフェッショナル資格CPLP(Certified Professional in Learning and Performance)の学習項目を紹介しました。 CPLP の学習項目には、次のようなものがあります(一部抜粋)。
・ 学習理論
・ 学習環境設計
・ 学習設計(ID)理論
・ 学習管理
・ プレゼンテーションスキル
・ ファシリテーションスキル
・ その他、テクノロジーの基本や法的・倫理的問題

 

これらの項目はラーニングにかかわるプロフェッショナルのグローバル基準です。この項目を社内講師に学習してもらうかどうかはそれぞれの組織の判断になりますが、社内講師に求められる知識やスキルの参考にはなります。そこで、これらの学習項目が、実際の研修現場でどのくらいのレベルで提供されているのか、研修講師を評価する際にみる項目(ポイント)として、以下にまとめました。社内講師の評価を第三者(上司、トレーナー、同僚)が行う際の項目としては、3つのスキルと3つのマネジメントで評価することができます(図表1)。

 

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プレゼンテーションスキル
① わかりやすい表現
・ 参加者の知識レベルや理解度に合わせて、表現や話し方をコントロールできている。
② 正しい言葉遣い
・ 参加者に合わせて、専門的な言葉や敬語などを適切に使い分けできている。
③ 話すスピードのコントロール
・ 相手の理解度を高めるため、内容に応じて話すスピードをコントロールできている。
④ 声の大きさのコントロール
・ 講義の場所に応じて、参加者が聞きやすい大きさの声で話すことができている。
⑤ 抑揚/間のコントロール
・ 相手の理解度を高めるため、内容に応じて話し方の抑揚や間をコントロールできている。
⑥ 擬音の管理
・ 聞き手の障害になるような擬音「え〜、あ〜、う?など」がない、または気にならない。
⑦ 効果的なアイコンタクト
・ 聞き手の集中度を高めるため、参加者に効果的なアイコンタクトができている。
⑧ 効果的なジェスチャー
・ 話の内容を補完する動作を効果的に活用することができている。

 

ファシリテーションスキル
⑨ 質問/意見への適切な対応
・ 参加者からの質問や意見に対して、冷静で中立的な対応ができている。
⑩ 傾聴スキルの活用
・ 参加者の発言や意見を正確に聞き取れるように傾聴できている。
⑪ 共感スキルの活用
・ 参加者の発言や意見に対して、相手が話しやすいように「共感」のスキルを活用できている。
⑫ 障害への適切な対応
・ 講義の進行を妨げる出来事があった場合、冷静に適正な対応ができている。
⑬ 参加者の巻き込み
・ 参加者が主体的に講義に参加するように、効果的な手法で受講者を巻き込むことができている。
⑭ 参加者との関係構築力
・ 講義において、参加者と良い関係を築き心理的に安全な環境を提供できている。

 

デザインスキル
⑮ 学習効果の高い研修教材の作成
・ 学習目標を達成するための手法を組み合わせて、効果的な学習教材を作成できている。
⑯ 効果的な手法を取り入れている
・ 学習効果を高めるため、必要な手法を取り入れて効果的な研修を作成できている。
⑰ 対象者にあった教材を作成している
・ 対象者のニーズやレベルに対応して学習目標に沿った研修教材を作成できている。

 

セルフマネジメント
⑱ 必要な情報収集、学習をしている
・ 研修業務に必要な情報を収集し、常に情報を更新するための学習が継続できている。
⑲ 事前に適切な練習を行っている
・ 研修実施前に、基準レベルの研修が実行できるための練習を行うことができている。
⑳ 内容に自信をもっている
・ 参加者が安心して研修に参加できるように自信をもって講義ができている。
㉑ 表情のコントロール
・ 研修の場の雰囲気をより良くするため、表情を効果的にコントロールできている。
㉒ アピアランスの管理
・ 研修講師としてのプロフェッショナルなイメージを与え、講師として信頼を得ることができている。
㉓ 適切な姿勢/歩き方
・ 講義を効果的にするための適切な姿勢/ 歩き方ができている。

 

タイムマネジメント
㉔ 90・20・8の法則を使っている
・ 適切に休憩を取り(90 分)、講義に変化をもたせ(20分)、巻き込むことができている(8 分)。
㉕ 計画した時間で研修を実施できる
・ 計画した時間を前提として、学習目的を達成するよう時間管理ができている。
㉖ 事前の会場準備ができている
・ 研修を効果的に行うための会場準備が事前にできている。

 

ファシリティマネジメント
㉗ 教材を効果的に使っている
・ 学習目標を達成するため、研修教材を効果的に使用できている。
㉘ クラス設備を効果的に使用している
・ レイアウトをはじめとして、研修効果を最大化するために、設備を効果的に活用できている。
㉙ 空調管理ができている
・ 参加者が快適な環境で学習できるように会場の空調管理ができている。
㉚ 音量、BGM 管理ができている
・ 参加者が快適な環境で学習できるように音響設備を適切にコントロールできている。

 

以上の評価基準で、第三者(上司、トレーナー、同僚)が実際の研修を確認して、社内講師の評価を行います。講師評価でよく行われるのは、このように能力や行動基準を整理して、「できているか/いないか」をチェックリストなどで確認する方法が一般的です。 この評価方法自体は悪くありません。しかし、講師のレベルは直接、講義を受けている参加者の育成レベルに影響するため、さらに社内講師のレベルを段階的に向上させる目的の評価方法として、次の段階では、評価のレベルについても着目します。

 

学習効果の4段階モデルの活用
研修効果を把握する手法として、カークパトリックの学習効果の4段階モデルがあります。これは、研修が受講者にとって、どのくらい学習効果があったのかを、4段階で評価する指標です。
(学習効果の4段階モデル)
Level 1.反応(Reaction):
・ 受講者が研修に参加して良かったと感じたレベル
Level 2.学習(Learning) :
・ 研修で学んだことを受講者が役に立ったと感じたレベル
Level 3.行動(Behavior) :
・ 研修で学んだことを実際に行動したというレベル
Level 4.業績(Results):
・ 研修で学んだことを実行した結果、効果があったレベル

 

この評価手法は受講者の学習結果を評価して、研修の効果を把握する代表的な方法です。この考え方を使って、研修講師の能力、行動を4段階のレベルで評価する方法が、次の「研修講師の評価の4段階モデル」です。
(研修講師の評価の4段階モデル)
Level 1.未達(Unskilled):
・ 評価項目のスキルや知識を取得できていない
Level 2.理解(Learning):
・ 評価項目のスキルや知識を理解できている
Level 3.行動(Behavior):
・ 評価項目を実行している
Level 4.応用(Practicable):
・自分のスキルや知識として常に実行し効果的である

 

このように、講師の能力レベルがどの段階にあるのか、前述の3つのスキルと3つのマネジメントの30項目それぞれを4段階で確認します(図表2)。 このようなレベル確認を、いつ、だれがどのくらいの頻度で行うのかは、各組織の判断になりますが、社内講師は研修だけを行っているわけではないと思いますので、人事考課には向きません。この評価方法は、社内講師の講義技術を把握することで、研修効果をより高めるための手法です。したがって、このような評価シートを使って確認した内容を活用して、社内講師の育成に役立てていただきたいと思います。

 

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次回は、「社内講師のチームづくり」について解説します。

 

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