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2017.05.26

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ATD人材開発国際会議2017参加速報3日目「3人の基調講演」

ATDの基調講演では、CEOと1年毎に交代する会長のスピーチそして3人のキーノートスピーチがあります。20年以上毎年基調講演に参加していて思うことは、CEOと会長のスピーチは、ATDがこのカンファレンスを通して世界の人材開発へ発信したいメッセージが込められています。同時に、キーノート・スピーチも単に著名な人物を選んでいるのでは無く、何らかの意図で選ばれていると思います。

 

1.基調講演 ATD会長マルシ・モー:Marci Meaux

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今年のスピーチは、変革において人材開発部門がどうやって組織の学びを変えて行くのかというスピーチでした。
冒頭、「70%もの組織が変革しようとしてもなかなか変われ無い!」というメッセージがありました。そして、ゼロックス社やコンパック社が、変革できず市場から去った一方、ナショナル・ジオグラフィック社やシスコ社が、市場変化の中で変革に成功した事例の話から始まりました。この話の展開は、人材開発だけの話ではなく、イノベーションの重要性を述べる時によく出る事例だと思います。従って、聞いたことのある話しに聞こえた聴衆もいたかも知れません。しかし、変革には人材、プロセス、テクノロジーの3つの要素が必要で、人材開発の視点から見ると、人材が変革に機能しなかったため、変革に対応できなかったというスピーチです。
これは、単に人材開発部門が、変革を支援しなければならないというだけではなく、何より重要なことは、HR自身が変わらなくてはならないというメッセージでした。
ATDでは、3年ほど前からイノベーションを支援することをテーマにしたセッションが多く見られるようになりました。チェンジ・マネジメントやイノベーション思考に関して人材育成や組織変革が、マネジメントを始め従業員支援することが重要というテーマでした。
今回は、会長のメッセージを始め、キーノートスピーカーのメッセージは、特にHR自体にフォーカスし変革を繰り返してゆかなくてはならないことを強調しているように思います。

 

2.基調講演  ケリー・マクゴニガル
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2番目は、日本でもベストセラーの本を出している、スタンフォード大学のケリー・マクゴニカルです。マクゴニカルのスピーチは、彼女の研究テーマである、ストレスへの向かい方の話しでした。
「ストレスは避けるべき」と考えると、返って健康や幸せに悪い影響が出るという研究結果の説明がありました。逆に、ストレスは最高の自分を引き出すという研究を紹介し、ストレスを活かすための3つのマインドセットについて語られました。

 

1. ストレスはエネルギーになる
ストレスは、心臓の鼓動や呼吸を早くします。その時、脳から脳からグルコースが出て、酵素が体内を周り、脳が一番能力を発揮するエネルギーを出している状態になります。
2. ストレスの経験は成長のために重要
深刻なストレスの状態になると、DHEAと呼ばれる脳内ホルモンが分泌され、恐怖を抑制しようとします。この経験が困難にあっても回復したり成長する力をつけてくれます。
3. ストレスは社会的な存在にさせる
ストレスは、思いやりや共感を受けるオキシトシンを促進させ、その結果ストレスが希望や幸せの感情に変わります。
マクゴニカルのスピーチは、TEDでも有名で、著書である『邦題:スタンフォードの自分を変える教室』』『邦題:スタンフォードのストレスを力に変える教科書』』に詳しく書かれいますので、聞かれた方も多いと思います。
このスピーチの中で、脳内ホルモンの話しが頻繁に出てきます。ATDでは、3年前くらいから、ニューロサイエンスを取り上げ、このスピーチに限らず、多くのセッションで脳と体の関係から、人材開発を行う根拠として説明することが多くなりました。学習に関しての科学は今後益々、探求されてゆくものと思います。

 

3.基調講演  ローナン・タイナン

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閉会前の最後のキーノート・スピーチは、ローナン・タイナンです。アイルランド出身で、障害を持って生まれながらも、パラリンピックのゴールドメダリストであり、医師やテノール歌手として活躍するなど、氏の困難と挑戦の人生についてストーリーテリングでの語りでした。
いくつかの困難なエピソードから、氏がいかにして乗り越えたり、また挑戦することになったのかは、家族や友人がメンターとなっていました。そいてそれ以上に氏自身がそのサポートを受けた時の考え方が今の成功を作り上げているものだと確信しています。
それは、
「前を向いて、自分の可能性を信じ、今を楽しむ」
「励ますのをためらわず、励ます機会があれば、その場で励まし支援する」
「人からの励ましと支援は受けとり謙虚に感謝する」
など、思いの込められた深いメッセージでした。
最後は、アイルランドの背景で本人が「ハレルヤ」の唄で締めくくり、会場中が感動に包まれ、スタンディングオベーションで終わりました。

 

今回、2日目のスコット&ケリー兄弟と、このローナン・タイランの2つのストーリーテリングがありましたが、ATDがこの構成をした背景はどのように考えられるでしょうか。
共にヒーローの成功なのですが、努力と挑戦の先にあった成功物語です。
今、米国はトランプ大統領になり、支持と反対に2分される状況になっています。米国の政治や社会だけの状況ではなく、BUCAの時代になりこのような極端な状況が、国でも、組織でも、個人の周りでも常に変化する環境になりました。このような状況下で、個人が常に困難を乗り越え、挑戦する強い自分と、同時に、利他と慈愛に満ちた自分を自ら創ることを示唆しているように聞こえました。

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