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2016.05.02

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人工知能の進化と我々の未来 〜本当にロボットに仕事を奪われるのか〜

人工知能の進化により、人間が行なっていた仕事をロボットが行うようになるという研究が様々な業界で話題になっています。世界的なコンサルティング会社BCGは公式な発表として、2025年までに、ロボットが担当する仕事は23%以上になるという具体的な予測 をしています。人間の仕事の多くはロボットに奪われるのか、奪われないのか、それは人間にとって本当に良いことなのか、あるいは、大量の失業者を生み出すのではないのか賛否両論があります。
ロボットは昔から、映画やアニメの世界で沢山のヒーローがいて、人間を助ける存在でした。ロボットは人が持てない重い物を持ったり、人ができない危険な作業をおこなったり、繰り返し同じ仕事を行なってくれる、人間をサポートする力強い見方でした。これからは人工知能の進化により、ロボットはさらに人間が行う仕事より、正確でミスも少なく、高い能力を発揮し、より精度の高い業務をこなすことが可能になるわけです。工場などで、ロボットが組み立てを行なったり、宇宙ロケットでロボットが月の探索を行うというシーンは誰でもイメージできるロボットだと思います。
これからは、もっと身近な世界で、銀行やホテルの受付や、レストランのフロアーサービス、英会話の講師など人間の通常の生活空間で、人工知能を持ったロボットが登場すると言われています。すでに、ロボットだけで受付を行うホテルや、携帯電話ショップができ、実際にビジネスが行われています。
あなたは、このような状況を、映画やアニメの話として「そんな世界はいつか来るかもしれない未来の出来事」と考えるのか、「近年のテクノロジーの進化はもしかすると、瞬く間に身近な出来事になるかも知れない」と考えるのかどちらでしょうか。

 

私のお客様で、スーパーマーケットのチェッカー(レジ係)の教育を行なった時、このロボットが登場する未来について興味深い議論がありました。それは、数十社のスーパーからチェッカーの教育担当者が集まり、チェッカーの人材育成を行うプロジェクトを1年かけて行なった時のことです。チェッカーの取り巻く環境で起こる様々な課題について研究し、より良いサービスや質の向上を図る目的で毎回真剣な議論が交わされました。
そこで、近年セルフレジの登場により、チェッカーはどのように対応するべきかが議題となりました。セルフレジとは、お客様が自分で商品のバーコードをレジに読み取らせ、会計もセルフサービスで行う仕組みです。セルフレジは近年多くのスーパーで導入され、今後も増えて行くと考えられています。チェッカーの人からすれば、レジの前に長蛇の列ができ、捌くことに精一杯だったのが少しは楽になるという人もいましたが、全てセルフレジになれば自分たちは失業してしまうのではという心配も出ました。
そして、セルレジを通らなくても、テクノロジーの進化によりカートに商品を入れ、出口を通れば機械が自動的に商品を読み取り、会計を済ませるようになるのではという議論になりました。実際にこの予測は正しく、既に商品を読み取る技術は存在し、かなり近い将来この仕組みを持った店舗が登場します。そして、ここからがロボットの登場で、スーパーマーケットなどでお客様と店員が交わす会話であれば、人型のロボットが人間に代わって対応できるということです。
実際にこのような議論が、チェッカーの経験者40名ほどが集まる会議で話題になりました。当然、チェッカーの人材育成を目的にしている集まりだったので、このようなことになるのであれば、チェッカーという仕事そのものが無くなるわけであり、この集まり自体が無駄な集まりになります。

 

それでは、この議論の終着点はどうなったのでしょうか。結論は非常にポジティブな結論になりました。議論はまず、スーパーマーケット業界においては、セルフレジの拡大やサービス対応のロボットが進出することは、ほぼ間違いないという意見から始まりました。チェッカーという仕事は、ある程度のスピードでレジが操作でき、ミスも無くなるほどに自信がつくまで数年はかかるそうです。
しかし、本当に能力の高いチェッカーは、お客様の顔を覚え、どんなに忙しくても、お客様に合わせた対応ができるようになると、何よりもお客様が彼女達のことをよく覚えてくれて、逆にお客様からチェッカーに声をかけてくれるそうです。これはロボットには絶対負けない技術である、という意見になりました。
セルフレジになり、人がいらなくなり、何かわからないことがあれば、ロボットに訊ねて正確に応えてくれたとしても、そのロボット自体を動かしているのが人間であるとわかっていれば、ロボット自体に感謝や親しみを持つでしょうか。この議論の結論は、ロボットが単純で定型的な業務を行なってくれれば、今までのチェッカーに時間の余裕ができる。この時間ができた分、もっとお客様を観察して、心からのサービスやコミュニケーションを行う時間を取らなければいけないという結論でした。

 

ITテクノロジーの進化により、冒頭の研究にあるように、生活や仕事の中にロボットが入り込んでくることは間違いと思います。今は人間が行なっている仕事でも、ロボットが行なった方が良い仕事は沢山出てきます。反対に、人間だからこそ行なったほうが良い仕事もあるはずです。ロボットには任されない、代表的な3つの仕事が考えられます。

 

1.「将来を俯瞰して見る能力が必要な仕事」
2.「人の気持ちに寄り添い共感する能力が必要な仕事」
3.「人間が行なっていること自体が信頼になる仕事」

 

1は、経営者や政治家のように、世の中を大局的に見て、自分の信念や直感に従い、過去の事例や経験に囚われることの無い、大胆な判断をする能力です。あるいは、作家、プロヂューサーという創作の能力が必要な仕事です。
2は、心理カウンセラーや演技・歌・話などにより直接人間に寄り添い、感動や喜び、悲しみを共感したり、させたりする仕事の能力です。あるいは、旅行ガイド、服飾デザーナ−などは人の感性を理解する能力が必要な仕事です。
3は、ロボットではなく、人間が行なっているということを知っていると価値が高まる仕事です。前述のチェッカーに代わり、お客様と直接心のこもった、コミュニケーションを行う仕事など沢山あります。保育や介護に関わる仕事や、神父様やお坊さんなどがその代表です。あるいは医者や弁護士など人間が行うという信頼感はロボットに勝るはずです。

 

人工知能が進化すればするほど、より人間らしい能力が着目されます。どのような仕事が、必要なくなるかではなく、どのような能力がより必要になるかが重要であり、その能力を高める努力が必要です。
このような、時代の潮流を捉え、人間らしい能力、自分らしい能力を磨けば、より社会からより必要とされる人になります。

 

(株式会社人財ラボ 代表取締役社長 下山博志)

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